抗甲状腺剤

畑内科クリニック 院長 畑 直成

一般名 商品名 組成・剤型・用量 薬価
●経口剤
チアマゾール メルカゾール(中外) 錠:5mg 10.20
プロピルチオウラシル チウラジール(東京田辺)
プロパジール(中外)
錠:50mg 9.70
●注射剤
チアマゾール メルカゾール(中外) 注:10mg 1管 64


チアマゾール(メルカゾール)って?
1953年から日本で販売され、抗甲状腺治療薬の中で一番よく使われています。またプロピルチオウラシルと比べて、効き目が高く(10倍以上)、1回だけの投与もできます。皮膚過敏症になりやすいが、強い副作用である無顆粒球(白血球の1つが無くなる)の頻度が高いという報告はありません。注射剤があるので、クリーゼ(甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、嵐のようになった状態)の時使いやすい。画像は約2倍です

添付文書


効能(効果のある病気):甲状腺機能亢進症

効きかた:
甲状腺に濃く集まって、甲状腺ペルオキシターゼを抑制します。その結果 monoiodothyrosine(MIT)、diiodothyrosine(DIT)から triiodothyronine(T3)、thyroxine(T4)の合成が抑制されます。一方、甲状腺ホルモンノ放出は抑制しないので、甲状腺腫が大きいほど蓄えられた甲状腺ホルモンが多く効き目の発見が遅くなります。経口投与1時間後に血中で最高濃度となり、24時間後に消えてなくなります。48時間の尿中に排泄された量は投与量の約68%でした。約6時間で血中濃度が半減し、作用が続くのは24時間。母乳へ移行します。プロピルチオウラシルと違って、末梢(消化器官)でTからTへの変換を阻害しませんが、通常の治療には影響が少ない。

服用のしかた:
投与期間が数年にわたります。15年服用しても約25%の患者が甲状腺機能亢進のままで薬を中止することができません。初めに大量に投与して早く甲状腺機能を正常化させ、その後少量に投与して状態を維持します。原則として最初は1日に6錠(30mg)から始め、1ヶ月ごとに甲状腺ホルモンを測定し、free T4, free T3が正常になってから4錠に減らします(TSHの正常化は約2ヶ月遅れる)。減量してから1ヶ月後の free T4, free T3 が正常または低下していたら、1日3錠とする。その後の減量は指標に free T4, free T3 のほか TSHを加えます。普通、治療開始後半年で1日1錠になります。

効果が低いときの原因で一番多いのが、服用の不規則です(ルーズな人は両面テープでカレンダーに貼り、家族にも協力してもらう)。服用が不規則になると、甲状腺腫が縮小することは少なく、反対に効きすぎて甲状腺機能の低下となり、甲状腺腫が大きくなることがあります。しかしこれは、薬剤を減量することで元に戻ります。甲状腺機能の低下の他の症状としては、顔面浮腫、筋肉痛が出ることもありますが、これらも減量で消失します。チアマゾール中止の指標は、TSHの正常化、T3 抑制試験の陽性化(抑制される)、甲状腺刺激抗体の陰性化、チログロブリン値の正常化が言われていますが、絶対的なものではありません。T3抑制試験は信頼性が高いですが、方法が複雑で費用がかりるので、3日に1錠まで減量できた人は中止を試みるのも方法です。

発病後間もないか、甲状腺腫が小さい人、短期間で甲状腺機能が正常となった人、少量の薬剤でコントロールできる人(3日に1錠)などは寛解している(治癒ではないがよい状態が続く)期間が長いほど再発する可能性が低くなります。

甲状腺機能亢進症は妊娠可能な若年女子に多いので、治療中に妊娠したり、妊娠中に見つかることがあります。妊娠初期に甲状腺機能亢進状態である場合、胎児の体外表部奇形は一般人口における発生率より約3倍高く、一方妊娠初期に甲状腺機能が正常なら薬剤の有無(服用量とも)に関係なく発生率は一般人口と変わりません。抗甲状腺剤は甲状腺機能を正常にすることにより、奇形を防ぐと考えられます。維持量になってから妊娠することが望ましいでしょう。維持量になるまでに妊娠してしまった場合、妊娠中期まで中止しない方が良いです。産後6ヶ月以内に再発することが多く、授乳中の場合は母乳への移行を考え、プロピルチオウラシルに変えます。

副作用:
約10%以上の患者に皮膚過敏症が出現しますが、抗ヒスタミン剤の併用で消失することが多い。強い副作用として無顆粒球症(白血球のひとつが無くなること)があり(0.2%)、放置した場合重大な結果を招きます(治療開始後2ヶ月以内が多い)。突然出現するので、2週間に1回白血球数(顆粒球数)を測定しても予測できないことがあります。発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹など無顆粒球の症状が出現すれば、直ぐに薬剤を中止して医師に連絡してください。空腹時低血糖を起こすインスリン自己免疫症候群があります。ほかに肝機能障害を起こすことがあります。


プロピルチオウラシルって?
チアマゾールによる皮膚過敏症などの副作用が出現したときに、プロピルチオウラシルに変更します(チアマゾールで副作用が出現しプロピルチオウラシルに変更しても同じ副作用が出現することがありそのときは手術アイソトープ治療に切り換える)。乳汁への移行が少ないとされています。画像は約2倍です

添付文書


効能(効果のある病気):甲状腺機能亢進症

効きかた:
チアマゾールと同様に甲状腺に濃く集まり、甲状腺ペルオキシダーゼを抑制します。その結果、MIT、DITからT3、Tの合成が抑制されることになります。またチアマゾールと同様甲状腺ホルモン放出は抑制しません(甲状腺腫が大きいほど蓄えられた甲状腺ホルモンが多いので、作用が表れ出すのが遅れる)。経口投与後30分から1時間で血中最高濃度となり、4〜8時間後に消失します。24時間の尿中排泄は投与量の80%でした。血中半減期は約75〜150分(チアマゾールより短い)、作用の持続は約6時間、乳汁移行は殆どありません。チアマゾールと違い、末梢でTからTへの変換を阻害します。

服用のしかた:
チアマゾールと殆ど同じです。異なる点は半減期が短いので分割投与が望ましいでしょう。効果はチアマゾールの1/10以下です。(プロピルチオウラシル1錠がチアマゾール約0.7錠に相当・・・プロピルチオウラシル1錠の容量は50mg・チアマゾール1錠の容量は5mg)。乳汁への移行がチアマゾールと比べて少ないので、授乳中はプロピルチオウラシルに変更することが多いです(プロピルチオウラシルは1錠当たりの効力が弱いうえに分割投与が必要)。患者によっては服用時に苦みを感じることがあります。

副作用:
チアマゾールと殆ど同じで、全副作用の頻度がチアマゾールより低いが、重大な副作用である無顆粒球症の頻度が高いといわれています。ときに毛髪が抜け落ちたり、皮膚の色素沈着が現れることがあります。まれにSLE様症状(発熱、紅斑、筋肉痛、関節痛、リンパ節腫、脾腫など)が現れることがあります。