統計学的考えのすすめ


たとえばある治療Aの有効性の評価のしかたを例にとります。この治療Aは有効率95%の大変良く効く治療だとします(一般の治療は通常こんなに高くありません)。医師からみれば100人に対して治療すると95人まで治癒するので大変良い治療と考えます。

一方患者さんにすれば他の人はどうでも良く(失礼)、自分が治れば良い治療ですし、もし副作用が出たりしたらなんとひどい治療になってしまうので、運の悪い100人中5人に入れば治療Aは駄目だということになります。友達にもあの治療Aは駄目だと言って、友達はチャンスを逃してしまうかもしれません。

次に治療法Bは有効性5%の有効率だとします。医師からみれば100人の内5人しか治癒しないので悪い治療だと考えます。しかしながら患者さんが、運のよい100人の内5人に入って、治癒すれば、大変よい治療と考えてしまい、友達に薦めてしまいます。。

従って、医師から良く効く治療と言われても運が悪ければ治らないし、見込みが無いといわれても治ることもあるということです。

最近新聞などのメディアで副作用で10人死亡とか良く耳にします。この10人死亡の意味は実は、何人に使ったのかが重要です。10万人中10人と20人中10人では同じ10人の人が副作用でなくなっても、随分意味が違います。

また新聞などのメディアはめったにないから掲載されるのだということも覚えてくださいね。日本では年間80万人が死亡し、一日2000人になります。癌、心臓病、脳卒中で死亡しても当たり前なので、新聞には載らないということです。みなさんがお葬式、お見舞いで聞く病気も、薬の副作用が原因なんて、一生に1回あったら多い方です。薬の副作用よりも通常の病気や、煙草、お酒で命を落としている方が随分多いのです。