甲状腺一般について
- 【甲状腺の場所】
- のどぼとけ(甲状軟骨)と胸骨の間で気管の前面。
解剖 Shocwave必要
- 【甲状腺の形と重さ】
- 馬蹄形(馬の蹄)またはH型、重さは15〜20gで正常では触れない(図1)。
【甲状腺の構造】
細胞(ろ胞上皮細胞)が袋のように並び、袋の中(ろ胞)にヨード、甲状腺 ホルモン及びその材料(サイログロブリン)が貯蓄されています。
- 【甲状腺の働き】
- ヨード(わかめ、昆布に多く含まれる元素のひとつ)を材料とし甲状腺ホルモンをつくる臓器です。下垂体(脳の一部)より甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、その刺激によって、ろ胞内のサイログロブリンより甲状腺ホルモン(T4、T3)が分泌されます。普通甲状腺からT4の形で分泌され、肝臓などの末梢組織でT4の40%がT3へ変換され(脱ヨード)、調節されています(甲状腺機能低下症の補充療法はより生理的にするためT4:チラージンSが用いられます)。甲状腺の特徴的な事は多量のホルモンをサイログロブリンのまま、ろ胞内に貯蔵されていることです(図2)。約2〜3週間ホルモン合成が停止しても、貯蔵されているホルモンだけで、十分量のホルモンを供給できます(このため、バセドウ病に対する抗甲状腺剤の治療効果は投与後1〜2カ月たってあらわれます)。甲状腺癌、亜急性甲状腺炎、一部の慢性甲状腺炎の患者では、ろ胞が破壊され多量のサイログロブリンが血中に流れ出し、慢性、亜急性甲状腺炎の患者ではこのため一過性の甲状腺機能亢進症を示すことがあります(図2)。
- 【甲状腺ホルモンの働き】
- A)血中では?
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- 血中に入った甲状腺ホルモン(T4、T3)のほとんど血中の特殊な蛋白質と結合します。T4の大部分はサイロキシン結合グロブリン(TBG)、プレアルブミンと結合し、一部はアルブミンとも結合します。T3はTBGと大部分が結合し、一部がアルブミンと結合します。T4もT3もごく一部がタンパク質と結合しないで遊離型(FreeT4、FreeT3)となって存在し、活性を持ち重要です。(遊離型T3の酵素による免疫学的測定法を私が世界ではじめて開発しました)
B)細胞にはいると?-
- T4、T3は細胞膜を通過し、細胞質、核、ミトコンドリアと結合します。ほとんどの体内の細胞に対して作用し、細胞内では酸素消費が進み、蛋白合成を促進します。成長、発育にも必要で、甲状腺ホルモンが乳児期、幼少期に欠乏すると発育が停止しクレチン病となります。甲状腺ホルモンが増加すると血糖が増加し、血中コレステロールが減少します。体重減少(食欲が増進し代謝亢進を上回り体重増加となるときもある)、多汗、神経過敏、動悸、下痢、月経過少、脈が早くなったりします。甲状腺ホルモンが欠乏すると血中コレステロールが増加し、筋肉異常が発生しCPK(筋肉の酵素)、GOT、LDH(肝臓、血球、心筋の酵素)が上昇します。むくみ(浮腫)、寒がり、疲れ易くなり、声がかすれたり、皮膚が乾燥したり、筋肉がつったり、動作が緩慢になり、言葉がもつれたり、便秘、体重増加、月経過多があらわれます。T4は半減期が約1週間、T3は約1日で、補充療法は通常T4によって行われます(2、3日飲み忘れても大丈夫)。ちなみに抗甲状腺剤は8時間ですから、飲み忘れないでください。
C)甲状腺ホルモンの調節は?-
- 甲状腺は副腎・性腺(子宮、卵巣、精巣)と同様、視床下部下垂体(頭の中のホルモンを調節する部位)の調節を受けています。
○TSHによる甲状腺の調節
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- TSHは下垂体より分泌され、甲状腺膜上のTSHレセプター(TSHと結合する部位)と結合し、甲状腺細胞が活発化され、甲状腺ホルモン合成、分泌だけでなく細胞の増殖も促します。従って血中TSHが増加すると甲状腺腫が増大することがあります。バセドウ病ではTSHレセプターが抗体(抗TSHレセプター抗体)と結合し、甲状腺細胞は刺激され甲状腺ホルモンを過剰に合成します。一方甲状腺機能低下症の一部ではTSHとTSHレセプターの結合を阻害する抗体も出現します。
○血中T4,T3によるTSH分泌の調節 -
- TSH刺激により甲状腺より分泌されたT4,T3は下垂体のTSH産生細胞に直接働きをやめるように働きます。一方血中T4、T3が減少すると、TSH分泌は増加します。この様にして血中T4、T3は一定に保たれるわけです。
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- 下垂体甲状腺系の調節とその異常アニメ
- 【甲状腺検査】
- 甲状腺検査はおもに血液検査が行われ、他にバセドウ病の確定診断、甲状腺腫瘍に対するアイソトープを使った検査、甲状腺腫用に対する超音波検査、CT検査、吸引細胞診を用いた検査があります。
- ○血液検査
- 血液検査はTSH、FreeT4、FreeT3、マイクロゾームテスト、サイロドテストが一般に行われます。バセドウ病にように甲状腺機能が亢進しますとTSHが減少し、FreeT4、FreeT3が増加します。一方、甲状腺機能低下症になりますとTSHが増加し、FreeT4、FreeT3が低下します。治療開始時や再燃時などホルモン変動が激しい時は通常月一回、安定化すると2、3カ月に一回TSH、FreeT4、FreeT3測定します。マイクロゾームテスト、サイロイドテストは甲状腺に対する自己抗体を測定し、自己免疫疾患である慢性甲状腺炎、バセドウ病で陽性となります(両疾患とも抗体価が高いほど最後には機能低下になると言われています)。抗TSHレセプター抗体の測定は甲状腺ホルモンが高いとき、バセドウ病によるものか他の原因かを鑑別する時、バセドウ病で薬を中止するときの指標や、母体血を調べ新生児甲状腺機能異常を予測したりするときに用いられます。また、末梢血液検査(白血球数など)はおもに抗甲状腺ホルモン剤の副作用のチェックに用いられ、投与開始2カ月までは2週間に一回測定します。2、3カ月に一回肝機能などについても検査します。バセドウ病では低コレステロール血症だけでなく、アルカリフォスファターゼやGOT、GPTの増加も見られ、血糖も上昇します。また、甲状腺機能低下症は高コレステロール血症、CPK、LDHが極端に上昇するときがあります。
- ○アイソトープを用いた検査
- ヨードを使う場合と他のアイソトープを使った検査があります。ヨードはほとんどが甲状腺のみに取り込まれ、甲状腺細胞(癌細胞を含め)のヨード摂取量を反映し、バセドウ病と慢性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎(破壊性甲状腺亢進症)との鑑別に用いられます。バセドウ病では甲状腺細胞は刺激されているのでヨード摂取は増加し、慢性甲状腺炎では甲状腺細胞が破壊されているのでヨード摂取は低下します。他のアイソトープ(テクネシウム、タリウム)を用いる検査はおもに甲状腺腫瘍に対して、悪性と良性を鑑別するときに用いられます。
- ○超音波、CT検査
- 甲状腺腫瘍に対して行われ、嚢胞か充実性か(中身が詰まっているか、袋状か)、周囲組織への浸潤、リンパ節への転移などについて調べます。
- ○吸引細胞診
- 甲状腺腫瘍に対して行われ、注射器と細い注射針を用い、腫瘍の一部を採取し、細胞が悪性か良性かを検査します。現在、安全で感度、特異性が一番優れています。細い針を使うので、麻酔も不要で、傷跡も残りませんので、繰り返すことができます。
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