畑内科クリニック
甲状腺の検査の一つで、この検査では、甲状腺の位置、形態、内部の構造についての情報が得られます。また、腫瘍の有無の診断に用いられます。特に異所性甲状腺や、悪性甲状腺腫の転移巣の発見に有用です。超音波とCTとは異なり、甲状腺の機能をも反映する機能画像を得ることができます。しかし、この検査だけで腫瘍の良性か悪性かを鑑別することは困難です。また、甲状腺の病気の診断に当っては、これだけでなく、触診や症状なども重視されます。最近超音波検査法が良く用いられ、形態を見る検査としての価値は薄れつつあります。
この検査で使用される放射性物質(放射性ヨード)には、131I、123I、99nTcO4 ̄、201T1と記される薬品(核種)が使用されます。
通常、食事により摂取されたヨードは、消化管より吸収され、血中に運ばれます。甲状腺は血中よりヨードを取り込んで、このヨードを材料にして甲状腺ホルモンを作っています。このヨード代謝を利用します。しかし、通常ヨードでは外からはその動態を観察することができませんので放射能を帯びたヨードを利用します。放射性ヨードは、放射性医薬品の一種で、一般に、診断、治療に用いられます。一般の医薬品と比べると、体内での行動は全く同じですが、放射線を放出するので、放射線を測定することで、その行動を体外から見ることができます。そして甲状腺に集まった放射性ヨードを画像として見ることが可能になります。薬品としての量は、極めて微量で、作用はほとんどありません。しかし、放射線被爆を伴うため、妊婦や、授乳中の女性には、絶対に使用できません。
摂取された放射性ヨードは、被爆をもたらしますが、一定の半減期があり、体内より数時間で減衰し、消失します。そして、全く普通のヨードへと変化してしまいます。
通常123Iを用います。ヨード代謝の画像で甲状腺の形、機能を見ることができます。99mTcも甲状腺へ集積すること、通常の食物由来のヨードには影響が出ないので(ヨード制限が不必要)123Iの代わりによく用いられます。
最近では、癌の種類によって、核種(放射性ヨード)が選択的に使用されています。
腺癌 201T1
未分化癌 67Ga
悪性リンパ腫 67Ga
また、他に甲状腺癌の遠隔転移の診断に用いられます。
この検査では、核種と呼ばれる放射性物質が使用されるため、普通のレントゲンの検査とは違った特別な検査室で行われます。
123Iシンチグラムでは二週間のヨード制限食のあとカプセルにて服用し、3時間後に撮影します。また3時間、24時間後に甲状腺への摂取率を測定します。正常では10〜35%です。
9mTcは静脈注射が行われます。
バセドウ病では50%以上の高値になり、慢性甲状腺炎による機能低下、機能亢進では5%以下になります。このため、甲状腺ホルモンが軽度高値のとき、バセドウ病によるものか、慢性甲状腺によるものかの判断にとても役に立ちます。この検査を受けるときに採血によるTSHの値をとっておくと、より判断しやすくなります。
また甲状腺ホルモンが正常の特殊なバセドウ病の診断、メルカゾールなどの薬を中止するときの目安があります。
乳頭癌などの甲状腺癌が肺などに転移したときに、転移したところに放射性ヨードの集積がみられることがあります。転移した甲状腺癌の場合、甲状腺を全部とってしまい、ヨード制限をきびしくして、一気に大量の放射性ヨードを投与して治療することがあります。
正常:甲状腺にヨードが取り込まれる様子がよくわかります。
バセドウ病:摂取が高く、甲状腺も大きくなっています。また甲状腺への取り込みも全体にわたっています。
慢性甲状腺炎:甲状腺が破壊がかなり進んでいるときは、、このようにヨードの取り込みがほとんどみられません。
結節性甲状腺種:甲状腺の右葉の下側に放射性ヨードを取り込まないところがあります。この部位に一致して、結節がみられます。甲状腺癌、甲状腺のう胞、甲状腺良性腫瘍などが原因です。
プランマー病:上記と同様に右葉の下側に結節ができていますが、上記とは反対に放射性ヨードのとりこみが強くなっています。いわゆるホルモン産生腫瘍です。
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